目 次
AI PCとは
AI PCとは、NPU(Neural Processing Unit)を搭載した新しいタイプのパソコンです。NPUはAI処理に特化したプロセッサーであり、NPUを搭載することで従来のパソコンにはなかった便利な機能を使用することができます。AI PCを使えば、柔軟で効率的に作業を進めることができるでしょう。まずはAI PCの特徴について解説します。
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NPUを搭載している
AI PCの最大の特徴は、NPUを搭載している点です。AI処理に特化したNPUを搭載することで、画像認識や自然言語処理などのAIタスクをスムーズに行えるようになりました。例えば、画像認識タスクを実行する際、従来のCPUやGPUに比べてNPUは数倍の速度で処理を進めることができるため、作業効率の向上が期待できます。
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Copilotキーを搭載している
AI PCには、独自の「Copilotキー」が搭載されています。このキーは、AI機能を瞬時に起動できる専用ボタンで、より簡単な操作でAIを活用できるようになりました。特にビジネスシーンやクリエイティブな作業では、Copilotキーを使うことによって作業効率を大幅にアップさせることができるでしょう。
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Copilot in Windowsに対応している
Copilot in Windowsとは、Microsoftが提供しているAIアシスタントで、Windowsユーザーであれば誰でも使用することができます。チャットベースで質問や指示を投げかければ、AIが適切な回答を返してくれます。Copilotを使えばタスクの自動化、情報の整理、データ分析など、AIを活用した幅広いサポートを利用することができるため、日常のパソコン作業をより効率的に進めることができるでしょう。
AI PCに搭載されているNPUとは
NPUとはNeural Processing Unitの略称で、AI処理に特化したプロセッサーです。NPUはAI PCの機能を活用するための重要な役割を果たしており、AI PCでは欠かせない存在となっています。NPUについて詳しく見ていきましょう。
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AI処理に特化したプロセッサー
NPUは、AIタスクに最適化して設計されたプロセッサーです。CPUやGPUでは時間がかかるようなAI処理でも、NPUならスムーズに進められるのが魅力。NPUを搭載したAI PCなら画像処理や音声認識などの複雑なAI処理をリアルタイムに実行することができます。また、NPUが効率的に処理を行うため、パソコン全体のパフォーマンスを向上し、他の作業も快適に進めることができるでしょう。
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パソコンよりも
スマホの方が先に搭載されていた実は、NPUはAI PCが登場する前からスマホに搭載され、以前からスマホのAI機能を支えていました。カメラのリアルタイムな画像処理や音声アシスタントのスムーズな応答は、NPUがあってこその機能でした。NPUがスマホでAIタスクを効率的にこなしていたことで、その技術がAI PCにも応用され、高度なAIタスクをスムーズに実行できるようになっています。
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現状は一部のノートパソコンのみに搭載
NPUは非常に有用な技術ですが、2024年10月時点ではすべてのパソコンに搭載されているわけではありません。NPUが搭載されているのは、主にビジネスやクリエイティブ分野での一部の高性能ノートパソコンに限られています。今後AIの重要性が増すにつれて、一般的なノートパソコンやデスクトップパソコンにもNPUが標準装備され、より多くのユーザーがその恩恵を享受できる時代が来るかもしれません。
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NPUの性能を表す指標は「TOPS」
NPUの性能は、「TOPS(Tera Operations Per Second)」という指標で表されます。この指標は、NPUが1秒間に処理できる演算の数を表しており、数字が大きいほど高性能です。例えば、40TOPSであれば1秒間に40兆回の演算が可能であることを意味し、TOPSが高いNPUを搭載しているパソコンは複雑な分析や処理を必要とする業務でも活躍が期待されます。
AI PCを使用するメリット
AI PCは高速なAI処理能力と効率的な作業支援機能を備えており、従来のパソコンでは実現できなかったスムーズなAI処理が可能です。業務の効率化や作業時間の短縮に貢献するなど、AI PCを使用することによるメリットについて順番に見ていきましょう。
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高速なAI処理ができる
AI PCではAIタスクを高速で処理することができます。NPUを搭載したことにより、従来のCPUやGPUでは処理に時間がかかるようなAIタスクでも迅速にこなすことができるようになりました。画像認識や自然言語処理といった複雑なタスクも短時間で結果を得ることができるため、作業効率が大幅に向上します。
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省電力稼働が可能
NPUはAI処理を効率化するだけでなく、低消費電力での稼働が可能です。CPUやGPUではAI処理には多くの電力を消費しますが、NPUは低精度演算を行うことにより、必要最低限の電力でAIタスクを処理することができます。AI PCは長時間の稼働やモバイル環境でも省電力で動作するため、バッテリーの持続時間を大きく延ばすことに成功しました。
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セキュリティリスクを低減できる
AI PCは高度なAI技術を活用することで、セキュリティ保護の観点でも大きなメリットがあります。NPUを使ったリアルタイムな脅威検出や、不正アクセスの防止など、従来のPCでは難しかったセキュリティリスクの低減が可能です。CPUではなくNPUがセキュリティ処理を高速化するため、システム全体のパフォーマンスを落とすことなくセキュリティを維持することができる点も魅力です。
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工数を削減できる
AI PCを導入することで業務の自動化が進み、工数を大幅に削減できる可能性があります。特に、繰り返し作業やデータ処理においては自動化の恩恵が大きく、生産性の向上につながるでしょう。AIを活用することで人員をより重要なクリエイティブ作業や戦略的な業務に集中させることができるため、効率的な業務運営を実現できます。
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人手不足の解消につながる
AI PCは人手不足の解消にも貢献します。AIを活用した自動化や効率化により、少人数でも大規模な作業をこなすことができるため、労働力の不足を補う手段としても有効です。人手不足が深刻な業界でも安定した業務運営が可能となり、生産性を維持して競争力を高めることができるでしょう。さらに、AIのサポートで従業員はより複雑な業務に専念できるため、少人数でも効率的に業務をこなせる環境を整えます。
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人為的なミスを抑制できる
AI PCは人為的なミスの抑制にも効果があります。AIが自動的にデータを解析して結果を処理するため、ヒューマンエラーの発生率を大幅に減らすことができます。例えば、財務データの処理やレポート作成などの複雑なタスクも、AIが自動的にミスを検出し、正確な結果を短時間で提示してくれます。AI PCを活用すれば、人為的なミスを大幅に減らし、信頼性の高い成果を得ることができるでしょう。
2024年5月によりスペックの高いCopilot+ PCが登場
2024年5月、Microsoftは新しいAI PCのブランドとしてCopilot+PCを発表しました。Copilot+PCは従来のAI PCよりもさらに高度なAI処理を行えるスペックを備えており、特にビジネスやクリエイティブな作業において優れたパフォーマンスを発揮します。Copilot+ PCの詳細な要件や機能などについて詳しく見ていきましょう。
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Copilot+ PCの要件
Copilot+ PCとして認定を受けるためには、いくつかのシステム要件を満たさなければなりません。具体的な要件としては次のようなものがあります。
- NPUの処理能力が40TOPS以上
- メインメモリーは16GB以上
- ストレージは256GB以上のSSD
高性能なGPUを搭載したパソコンであれば、全体としての性能が40TOPSを超えることはあるでしょう。しかし、Copilot+ PCとして認められるためには、NPU単体での性能が40TOPS以上である必要があります。
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2024年9月時点で要件を
満たすSoCはSnapdragonのみ2024年10月時点では、Copilot+ PCの要件を満たすSoCはQualcommの「Snapdragon」シリーズのみです。Snapdragonはスマホ向けのSoCとしても高い評価を受けており、AI処理に優れた性能を持っています。現状ではCopilot+ PCを使いたければSnapdragon一択ですが、今後の開発により他メーカーのSoCも対応してくる可能性が高く、さらに多様な選択肢が増えることが期待できるでしょう。
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今後Copilot+ PCに
認定されるであろうSoC今後、Copilot+ PCに認定されるであろうSoCとして、Intel Core Ultra(Lunar Lake)やAMD Ryzen AI 300が挙げられます。これらのSoCは、従来のパソコン用プロセッサーにAI処理能力を追加し、AIタスクを高速で処理できるように設計されています。それぞれの特徴について紹介します。
● Intel Core Ultra(Lunar Lake)
Intelは2024年9月に新しいプロセッサーシリーズCore Ultra(Lunar Lake)を発表しました。Lunar Lakeには、Microsoftが提唱するCopilot+ PCの基準を満たすNPUが搭載されており、AIベースのアシスタント機能や、リアルタイムデータ分析など、ビジネスシーンで求められる高度なタスク処理に適しています。
● AMD Ryzen AI 300
AMDは2024年7月、Ryzen 9のグレードに相当するハイエンド向けのチップ「Ryzen AI 300」を発表しました。Ryzen AI 300はCopilot+ PCの要件を満たしており、AIベースのアシスタントや画像処理に強みを持っています。エッジAI処理にも対応しているため、クラウドに頼らずローカルでのAI処理が可能。セキュリティ面でも安心して使用することができます。リアルタイムでの処理が求められるタスクでも迅速に結果を出すことができるため、生産性の向上が期待されます。
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Copilot+ PCでできること
Copilot+ PCでは、従来のAI PCよりもさらに多彩なAI機能を活用することができます。AIを活用したリコール機能や、クリエイティブなコクリエーター機能、さらにはリアルタイムでの音声翻訳や映像処理など、AIのサポートを最大限に活用し、業務効率や生産性を飛躍的に向上させることが期待されています。Copilot+ PCで利用できる具体的なAI機能について、一つずつ説明します。
● リコール:過去の表示コンテンツを検索
「リコール」は、パソコンで表示した過去のコンテンツを素早く検索できる機能です。例えば、数日前に閲覧したWebサイトや文書などを簡単に再度表示させることができます。作成した文書や閲覧した動画までを特定のキーワードで一瞬で検索できるため、容易に情報やコンテンツの確認・再利用が可能です。無駄な時間を大幅に減らして生産性を高めるのに役立つでしょう。
● コクリエーター:手描きの絵やイラストから画像生成
「コクリエーター」は、ユーザーの手書きの絵やイラストを基にしてAIが画像を生成してくれる機能です。クリエイティブなアイデアをすぐに視覚化できるため、従来のデザインプロセスを大幅に短縮します。ユーザーがアイデアを紙に描き、それをスキャンしてCopilot+ PCに入力すれば、AIがそのアイデアを高精度なデジタルアートとして仕上げます。色の調整や構図の修正も自動で行えるため、短時間でプロフェッショナルな仕上がりが可能です。
● ライブ キャプション:音声出力をリアルタイムで翻訳
「ライブ キャプション」は、動画や音声の内容をリアルタイムで翻訳し、字幕として表示できる機能です。外国語の会議やプレゼンテーションなどを瞬時にテキスト化して参加者でリアルタイムで共有できるため、グローバルなコミュニケーションが可能となります。ビジネスの場においては多国籍チームとのコミュニケーションを円滑にし、言語の壁を超えた協力を促進します。
● Windows スタジオ エフェクト:リアルタイム映像に特殊効果を付与
「Windows スタジオ エフェクト」は、ビデオ通話やプレゼンテーション中にリアルタイムで映像に特殊効果を加えることができる機能です。背景を変更したりエフェクトを追加したりできる他、周囲の雑音を排除する機能も備えています。環境に関わらずビデオ通話に参加でき、映像のクオリティを向上させることで視覚的に印象を残すことができるでしょう。
● リスタイル イメージ:既存の画像を好きなように加工
「リスタイル イメージ」では既存の画像をAIが分析し、さまざまなスタイルに変換することができます。ワンクリックで画像の雰囲気やデザインを一新することができるため、簡単にプロレベルの加工が可能です。簡単にユニークなビジュアルコンテンツを作成できるリスタイル イメージは、クリエイターやSNSユーザーにとっても便利な機能となっています。
Copilot+ PCを買う前に気を付けたいこと
Copilot+ PCには多くの便利な機能がありますが、購入前に注意すべき点もいくつか存在します。古いアプリの互換性や価格、AI対応アプリの少なさなども考慮し、自分のニーズに合っているかどうかをしっかり確認してから購入することが大切です。
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古いアプリが動かない可能性がある
Copilot+ PCは最新のAI機能を活用するために新しい技術で設計されているため、古いアプリとの互換性に問題が生じることがあります。エミュレーターを使用すれば動作するとのことですが、Copilot+ PCはまだ登場したばかりなので未検証な部分が多いのも事実です。アプリの動作不良が致命的な問題になり得る環境であれば、Copilot+ PCの導入はしばらく様子を見るか、動作環境を事前にしっかり確認することが重要です。
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AI対応のアプリが少ない
現在、AIに対応したアプリはまだそれほど多くなく、使用できる機能も限定的である場合があります。いくらパソコン側の性能が高くても、対応するアプリがなければ十分に性能を発揮することができません。Copilot+ PCのすべての機能を最大限に活かすには、AI対応アプリが増えるまでしばらく待つ必要があるかもしれません。今後、AI対応のアプリが増加することが期待されますが、現時点での選択肢は少ないため注意が必要です。
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価格が高い
Copilot+ PCは高性能なパーツを搭載しているため、他のパソコンと比べると割高になる場合があります。コスパを重視するのであればNPUを搭載したAI PCよりも、高性能なGPUを搭載したゲーミングPCの方が画像生成能力が高い可能性があるなど、Copilot+ PC購入する際には、価格と性能のバランスをよく考える必要があります。
AIを搭載したおすすめノートパソコン3選
ここまでAI PCでできることについて解説してきましたが、現時点では全てのパソコンにNPUが搭載されているわけではありません。ここでは、Lenovoの製品の中からおすすめのAI PCを3点紹介します。
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ThinkPad P16v Gen 1 AMD
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ThinkPad X1 Carbon Gen 12
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Lenovo Yoga Slim 7x Gen 9
まとめ
AI PCは、従来のパソコンとは一線を画し、NPUや専用のAIキーを搭載しているのが特徴です。高速なAI処理や低消費電力での駆動ができるため、業務の効率化や生産性の向上に寄与します。AI PCが登場したのが2023年頃とまだ日が浅いため、対応アプリが少ないことや利用できる機能が限定的であるといった課題はありますが、これからAI PCを使ってできることがさらに増えていくことが期待されています。