目 次
グラボ(GPU)の基礎知識
ゲームやクリエイティブな作業には高性能なGPUが必須です。ここでは、GPUを搭載した拡張ボードであるグラフィックボード(グラボ)について、最低限押さえておきたい基礎知識について解説します。
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高性能なモデルほど価格が高い
グラボと言えば、NVIDIAのGeForceシリーズやAMDのRadeonシリーズが有名ですよね。2~3万円で購入できるエントリーモデルから、8万円以上するハイエンドモデルまで幅広いラインアップが用意されています。グラボの価格と性能は概ね比例するため、価格の高いモデルを選べば遊べるゲームの幅は広がるでしょう。しかし、プレイするゲームによってはそこまで高性能なグラボが必要でない場合もあります。グラボ選びにおいては、自分に必要なグラボのスペックを見極めることが重要です。
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映像処理にはGPUが必要
GPUとは、パソコンでグラフィックを処理するために必要な演算用のプロセッサです。一般的なパソコンに搭載されているGPUは、CPUに内蔵されているタイプがほとんど。ゲームやクリエイト作業など比較的重い処理を行う場合、内蔵型のGPUではスペック不足となるため、高性能なGPUを搭載したグラフィックボードが必要となります。GPUの性能が不足していると動作がカクついたりフリーズしたりすることがありますが、十分な性能を持つGPUがあれば、スムーズに映像を処理することが可能です。
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GPUの種類
GPUは膨大な量のデータを高速で処理できるため、映像処理には欠かせないパーツです。このGPUですが、どのような形でパソコンに搭載しているかによって大きく3つに分類されます。
- CPU内蔵型
- グラフィックボード搭載型
- GPUクラウド
それぞれの特徴について見ていきましょう。
● CPU内蔵型
CPU内蔵型のGPUとは、その名の通りCPUに内蔵されているタイプのGPUで、統合型GPUと呼ばれることもあります。現在流通しているほとんどのCPUにはGPUも内蔵されており、別途GPUを購入しなくてもメールの閲覧や事務作業などにおける簡単な映像処理であれば問題なく実行することができます。
CPU内蔵型は生産コストが安く発熱量や消費電力が低いため、高度な映像処理をしないのであればコスパの優れたタイプです。
● グラフィックボード搭載型
グラフィックボード(グラボ)とは、GPUを搭載した拡張ボードのことであり、ビデオカードと呼ばれることもあります。全ての人に必要なパーツというわけではありませんが、動画や画像の編集をしたり、3Dグラフィックなどが使用されているゲームをプレイしたりする場合は外付けのグラフィックボードが必要です。グラフィックボードを搭載することで発熱量や消費電力は大きいものの、内蔵型のGPUでは対応できないような映像処理でもサクサクとこなすことができます。
● GPUクラウド
GPUクラウドとは、インターネット経由でクラウド上のサーバーに搭載されたGPUを利用できるサービスのことをいいます。インターネット環境があればすぐに利用開始でき、初期の導入コストを安く抑えられるのがクラウド型の魅力。通常、GPUは数年ごとに買い替えが必要となりますが、クラウド型の場合は最新またはそれに準ずる性能のGPUが提供されていることが多く、常に高性能なGPUを利用することができます。
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GPUの製造メーカー
GPUを製造しているメーカーとしては、NVIDIAとAMDの2社が世界的にも有名。また、NVIDIAやAMDほどシェアは大きくないものの、IntelもGPUの製造・販売を行っています。実はこれらの他にもいくつかGPUメーカーは存在しますが、GPUを選ぶ際はこれら3社の中から選べば問題ないでしょう。それぞれの特徴について簡単に紹介していきます。
● NVIDIA(エヌビディア)
NVIDIAはアメリカに本社を置く大手半導体メーカーです。「ゲーム用のGPUならNVIDIA」と言われることもあるほど定評があり、同社の代表的なGPUであるGeForce RTXシリーズは多くのゲーミングPCで採用されています。また、ゲーム用のGPUだけでなく動画編集や3Dモデリングなどで高いパフォーマンスを発揮するNVIDIA RTXシリーズも展開しており、近年はAIを活用したディープラーニングの分野でも活躍しています。
● AMD(エーエムディー)
AMDもNVIDIA同様にアメリカに本社を置く企業で、GPUだけでなくCPUの開発も行っています。同社の人気製品であるGPU「Radeonシリーズ」はNVIDIAのGeForceシリーズよりも比較的安価で、専用のソフトを使うことによってゲームでも高いパフォーマンスを発揮することが可能。コスパの良いGPUを製造・販売しています。
● Intel(インテル)
Intelは世界最大手の半導体メーカーで、同社のCPU「Core iシリーズ」は数あるCPUの中で最も知名度の高いモデルの一つです。Intelでは主にCPU内蔵型のGPUを製造しており、搭載数だけで見ればNVIDIAやAMDよりも多くのパソコンにIntel製のGPUが採用されていると言えます。そんなIntelですが、2021年には約20年ぶりとなるグラフィックボードを発表。翌年2022年には、一般向けのGPU「Arc Aシリーズ」を発表したことで話題となりました。
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グラボ搭載のパソコンでできること
ゲームやクリエイト作業を目的としない人にとっては、GPUと聞いてもあまりピンとこないかもしれません。しかし、動画や画像の編集作業ではもちろんのこと、Webサイトの閲覧やメールを送受信するのにもGPUは必要です。ほとんどのCPUにはGPUが内蔵されているため、軽めの処理であればCPU内蔵のGPUで事足りるケースも多いでしょう。
ただし、3Dの最新ゲームをプレイしたり、高画質のモニターを高いフレームレートで表示したりするためにはどうしても内蔵型のGPUではスペック不足となってしまいます。そのような場合、外付けのグラフィックボードを搭載することで、パソコンの用途の幅を広げることができます。GPUは膨大な情報を並列で処理することが得意なので、近年ではグラフィックボードを搭載したパソコンがAIのディープラーニングや仮想通貨のマイニングなどにも使われるケースもあるようです。
GPU(グラボ)の型番からおおよその性能が分かる
グラボは各メーカーからさまざまな製品が販売されているため、どれを選べば良いか迷ってしまうこともあるでしょう。そんな時、型番からある程度の性能を判断することができれば希望する製品を選びやすくなります。 例えば、「NVIDIA GeForce RTX4060」というモデルの型番の意味について見てみましょう。先頭の「GeForce」はブランド名、「RTX」は等級、「40」はシリーズ名、「60」はグレードを表しています。ちなみに、GeForceシリーズの等級にはGTXとRTXというものがあり、両者はレイトレーシングやDLSSに対応しているかどうかといった点に違いがあります。 このように、等級の部分まではグラボの使用目的によってあまり迷うことなく決めることができるでしょう。あとは予算や希望する性能に合わせてシリーズやグレードを決めるだけなので、型番の見方を知っているだけでも随分とグラボ選びが楽になります。
グラボの選び方
ラインアップが豊富で価格帯も幅広いグラボを何の指標もなく選ぶのは大変ですよね。グラボを選ぶ際は冷却性能やベンチマーク、インターフェースなどさまざまな項目を参考にします。ここでは、どのような点に着目してグラボを選べば良いかについて解説します。
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メーカーやシリーズから選ぶ
グラボはNVIDIAやAMDなどが製造しているGPUを搭載した拡張ボード。グラボには、GPUの製造元とグラボメーカーが同一であるリファレンスモデルの他に、NVIDIA製やAMD製のGPUを使って複数のメーカーが独自のデザインを加えたオリジナルモデルがあります。最新のモデルを使いたいのであればリファレンスモデルを、冷却性能など性能にこだわりたいのであればオリジナルモデルを選ぶと良いでしょう。
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ベンチマークを比較する
GPUの総合的な性能を判断するためには、コア数やクロック数、メモリーなどさまざまな要素を加味する必要があります。同じメーカーの同シリーズ同士のグラボであれば容易に性能を比較することができますが、メーカーやシリーズが異なるグラボ同士の場合はどちらが優れているのかを判断するのが難しいケースも。そこで役に立つのがベンチマークです。ベンチマークはベンチマークサイトで確認することができ、GPUの性能を総合的に数値化したものなので、気になるグラボのスペックがどの程度の位置づけなのかを簡単に確認できる目安となります。
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プレイしたいゲームの
必要スペックを確認するどの程度のスペックを備えたグラボが必要であるかは、使う人の好みや目的によって異なります。例えばゲーム目的でグラボがほしいと考えている場合、ゲームによって必要スペックや推奨スペックが異なります。激しい戦闘や3D映像が多用されているジャンルのゲームであれば高性能なグラボが求められますし、そうでない場合はエントリークラスのグラボでも問題ない場合もあるでしょう。公式サイトなどで推奨環境を確認し、推奨動作環境ぎりぎりではなくある程度はスペックに余裕のあるグラボを選ぶことをおすすめします。
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冷却性能を確認する
グラボはパソコンのパーツの中でも特に発熱しやすいパーツで、高温になると70度を超えることもあります。グラボも他のパーツと同様、高熱状態で使用し続けると本来の性能を発揮できないだけでなく、故障の原因にもなってしまうので対策は必須。そこで重要になるのが冷却方法ですが、グラボのモデルによって冷却方法は異なります。複数のファンを回して冷却するタイプのスタンダードな空冷式の他にも、価格は高いけれど静穏性・冷却性に優れている水冷式などがあります。スペックの高いGPUほど発熱量も大きくなるため、冷却性能からグラボを選ぶというのも一つの手です。
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消費電力を確認する
数あるパソコンのパーツの中でも消費電力の大きいのがグラボ。特に、スペックの高いモデルであるほど消費電力も大きくなる傾向があります。毎日長時間ゲームをプレイしたり、動画編集をしたりするような場合は月々の電気代も高くなるため、グラボの消費電力もチェックしておきましょう。
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電源ユニットの容量を確認する
グラボは消費電力が大きなパーツなので、パソコンに搭載している電源ユニットの容量が足りているかどうかも確認する必要があります。仮に電源容量が足りていない場合、突然パソコンの電源が切れたり動作が不安定になったりする可能性もあるので要注意。電源容量については単にグラボの消費電力を確認するだけでなく、CPUやマザーボードなどパソコン本体に加えて他の全てのパーツも含めて計算する必要があります。また、電源容量は大きければ大きいほど良いというわけではなく、消費電力の約2倍が適正であるとされています。あまり電源容量に余裕がない場合は省電力のグラボを選ぶか、電源ユニットの交換を検討しましょう。
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端子の種類と数を確認する
出力端子の種類と数はグラボによって異なります。一般的な出力端子には「HDMI」「DisplayPort」「DVI」「VGA」などがあり、接続するパソコンやモニターに合わせたインターフェースのグラボを選ぶことが重要です。また、複数のモニターを同時に接続してマルチモニターとして映像を映し出す場合、出力端子の数もモニターの台数分必要となります。仮に出力端子の種類や数が不足していてもハブや変換ケーブルなどで対応することは可能ですが、余計な出費を増やさないためにも手持ちの機器のインターフェースを確認しておきましょう。
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PCケースのサイズやマザーボードの
スロットを確認するグラボがパソコンケースに収まるかどうかも重要なチェックポイントです。グラボは製品によってサイズが異なるため、場合によってはケースに入りきらないことがあるので要注意。一般的にスペックの高いグラボほど発熱量が大きいため、冷却性能を高めるためにファンの数が多かったりファンのサイズが大きかったりと、グラボのサイズも大きくなりがちです。また、グラボはマザーボードのPCI Express2.0または3.0スロットに接続するため、スペースだけでなくスロットの空きについても確認しておきましょう。
グラボの購入前に知っておきたいこと
グラボはパソコンの性能を拡張してくれる魅力的なパーツですが、購入する前に知っておきたいポイントがいくつかあります。ここでは、グラボを搭載することによるデメリットや購入時前の注意点などについて紹介します。
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発熱量が大きい
グラボは温度の上がりやすいパーツで、製品によっては最高温度が90度以上に設定されていることもあります。あまり高温の状態が続くとパフォーマンスが落ちたり故障したりといったリスクがあるため、高いフレームレートを維持するためには適切な排熱が必要です。排熱性能が不足している場合、発熱のペースを遅らせることはできても、冷却には至らないということもあるかもしれません。ゲームや動画編集といった負荷の高い作業を行うとグラボは発熱しやすくなるため、あまり高温の状態が続くようであれば適度に休ませることも必要です。
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消費電力が大きい
グラボがあれば最新のゲームを美麗な映像で楽しめたり、動画や画像の編集をできるようになったりとパソコンでできることの幅が広がります。またWebサイトの閲覧やExcelなどを使った事務作業においても映像処理がスムーズになるため、仕事の効率が上がることもあるでしょう。しかし、グラボは消費電力が大きく搭載しているだけでも電気代が高くなってしまいます。パソコンの使い方によっては、グラボを搭載しない方が良いというケースもあるかもしれません。
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半永久的に使えるわけではない
グラボには物理的な寿命の他に、性能面での寿命というものがあります。物理的に故障しているわけでなくても、スペック不足で手持ちのグラボが役に立たなくなるというものです。例えば、グラボの購入時点ではほとんどのゲームをプレイすることができる状態であっても、新しいゲームが登場する度にグラボの必要スペックが高くなり、数年後にはスペック不足で買い替えが必要となる可能性があります。特にエントリークラスのグラボは性能面での寿命が短いため、長く使いたいのであればある程度スペックの高いモデルを選ぶと良いでしょう。
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ノート型とデスクトップ型の
GPUでは性能差がある同じ型番のGPUでも、デスクトップ型とノート型では搭載されるGPUの性能には差があります。ノート型はデスクトップ型よりも内部スペースが限られているため、どうしても小型化することにコストを割く必要があり、処理能力や消費電力、サイズなどが異なります。どの程度の性能差があるかについてはベンチマークスコアなどを参考に確認してみて下さい。
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ノート型は後からグラボの
追加や交換ができないデスクトップPCの場合は必要に応じて後からグラボを追加することができます。一方、ノートパソコンはパーツの増設や換装を前提としていないモデルが多く、後からグラボを追加することが難しいケースがほとんどです。もしグラボを必要とする可能性があるのなら、ノートパソコンの場合は初めからグラボが搭載しているモデルを選びましょう。外付けのグラボを接続できるケースもありますが、モデルによっては外付けでも取り付け不可な場合もあるため確認が必要です。
ゲームに適したグラボ搭載のおすすめパソコン3選
ゲームを快適にプレイするのに適したグラボを搭載したパソコンを3点紹介します。パソコン選びに迷っている人はぜひ参考にしてみて下さいね。
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- グレー
まとめ
グラボは種類が豊富なので、何の指標もなく選ぼうとするとなかなか大変です。型番からある程度の性能を把握することができるため、まずは予算や用途に合わせてGPUのメーカーやシリーズ、グレードを決めると良いでしょう。その後、冷却性能やベンチマークなどグラボの特徴を比較しながら選ぶのがおすすめです。スペックの高いグラボは価格も高い傾向にありますが、グラボは一度購入すれば半永久的に使えるといったものではありません。最新のゲームをプレイし続けたいのであれば一定期間ごとに買い替えが必要となるため、予算や使い方に合わせて自分に最適なモデルを選びましょう。