A river meandering through farm land
農業

AIと地理空間分析で世界の食糧供給事情を救う

トウモロコシ、コーヒー豆、それにワインといったものまで、気候変動や人口増加、水不足の影響を受けている食糧はいくつかあり、温暖化が進むにつれてこの状況はますます悪化しています。ノースカロライナ州立大学 (NCSU) の研究者チームは、Lenovoと提携してディープラーニングのアルゴリズムと地理空間分析テクノロジーを使い、この問題に取り組んでいます。この取り組みによって、手遅れになる前に大規模な混乱を食い止め、地球上の不可欠な食糧供給システムを確保することを目標としています。

トウモロコシ、コーヒー豆、チョコレート、ワインなどを始めとする食品出典 や飲料は、気候変動や人口増加、水不足の影響によって近い将来大きな影響を受けることが予想されており、一部ではその影響はすでに始まっているとも言われています。近年の調査出典 では、世界のトップ10の農作物の収穫量が減少しており、食糧事情の不安定な国々に特に深刻な影響を与えているとの結果が出ています。

この状況はますます悪化しています。研究者たちは2050年までに世界人口が30億人に達すると予測しており、増加した世界人口の食糧を確保するためには農業生産も今より50%増加させなければならない、とノースカロライナ州立大学コンピュータサイエンス学部の准教授と地理空間分析センターのアソシエイトディレクターを兼任するランガ・ラジュ・ヴァツァヴァティ氏 (Ranga Raju Vatsavai) は指摘しています。また農作物を生産するのには淡水が必要必要ですが、そのうち70%はすでに農業に使用されているのだといいます。

「この状況を乗り切るにはスマートに進化したテクノロジーを利用した解決法が必要です」と、大規模な時空間データ管理と機械学習分野で25年以上もの経験を持つヴァツァヴァティ氏は述べています。

Lenovoと提携して、ヴァツァヴァティ氏は農業に人工知能 (AI)  を活用し、さらにディープラーニングアルゴリズムを採用することによって、「将来の世界人口のニーズ合わせて食糧を最適化する」という目標のもと、世界規模での農作物監視という課題に取り組みました。現在の時点で世界の食糧生産は需要を超えているものの、世界人口の増加と気候変動の影響に伴い、状況は将来的に必ず変わっていくでしょう。 

ヴァツァヴァティ氏とそのチームは、革新的な地理空間画像分析テクノロジーを農業に活用することで、農作物の健康状態をマッピング、監視、予測し、来たるべき世界規模の食糧不足をできるだけ緩和することを目標としています。高解像度の衛星画像を利用した分析プロセスは、農作物を特定しその健康状態をこれまでにないスケールと精度で監視することができます。最終的に、同システムは干ばつ、凍害、水の使用法にいたるまで、気候変動による将来の影響をモデル化できるようになるでしょう。またシステムの中には、農地に直接埋め込み、土の湿度や天気も監視できるセンサーも搭載される予定になっています。

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チームの時空間データセットには高解像度の衛星画像や気候変動、気象データなども含まれ、その量は膨大です。「実行可能なインテリジェンスを生成するには、効率的なAIと機械学習アルゴリズム、それに最新の強力なコンピュータインフラストラクチャへアクセスできなければ間に合いません」と、ヴァツァヴァティ氏は語ります。

こうした高度な農作物モデルの生成は大学のコンピュータレベルを超えているため、Lenovoとのパートナーシップはヴァツァヴァティ氏のラボにとって非常に重要です。

Lenovoはお客様のAI体験をさらにパワフルなものにするために尽力しており、その賜物としてヴァツァヴァティ氏の勤務するノースカロライナ州モリスビルを含む、3つの新しいAI Innovation Centerを設立しました。このLenovo AI Innovation Centerでは、ヴァツァヴァティ氏とそのチームはLenovoのハイパフォーマンスコンピューティングクラスタからLiCO AIプラットフォームといった強力なソフトウェアツールまであらゆる最新のリソースにアクセスできます。また、プロジェクト実施中に、データサイエンティストやアーキテクトからガイダンスやサポートを受けることもできます。

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Lenovoはお客様のAI体験をさらにパワフルなものにするために尽力しており、その賜物として3つの新しいAI Innovation Centerを設立しました。

ヴァツァヴァティ氏は現在、最も高度なパフォーマンスを誇るワークステーション、Lenovo ThinkStationをデスクサイドのAIサンドボックスとして使用しており、Lenovo AI Innovation Centerのハイパフォーマンスコンピューティングでモデルを実行する前に、研究室で様々なモデルをスピーディーに開発することができます。

 

研究プロジェクトの第二段階として、ヴァツァヴァティ氏はモノのインターネット (IoT) データソースとエッジコンピューティングを統合することでAI予測機能の精度と回復力の向上を図っています。この実現のためには、より小型のThinkStation Tinyが使用されています。

「このエッジコンピューティングデバイスを地中のセンサー近くに配置できれば、リアルタイムのコンピューティングを実行できます」とヴァツァヴァティ氏は語ります。「これが最終的な目標です。つまり、これらのコンピューティングデバイスをデータ取得に利用して実行中のAIにリアルタイムで実行可能な知識を生成させること。この最終目標に向かって現在邁進しています」

米国のような国では、食糧、エネルギー、水は連邦、州、地方レベルでそれぞれ別の機関によって管理されています。「そのため、これら3つの重要な体制間で相互の連携が欠落する結果になってしまっています」とヴァツァヴァティ氏は言います。彼の願いは、自身の地理空間分析AIと機械学習に関する研究によってこうした制約が少しでも軽減され、3つのセクターからの膨大なデータを統合することで「強力な相互関係」が実現することです。「気候の変動と人口増加により世界が再定義されている中、新しい生き方に対して備える方法はホリスティックなアプローチ以外にはありません」