目 次
CPUとGPU
パソコンがデータを処理する際に必要なプロセッサーであるCPUとGPU。名前は似ていますが、両者の役割は全くの別物です。CPUがパソコンの頭脳としての機能を持つのに対し、GPUはグラフィック処理に特化しています。パソコンの使用目的によってそれぞれ必要なスペックが異なるため、まずは両者の違いについてしっかりと理解しておきましょう。
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CPUの役割
CPUとは、Central Processing Unitの略称で、パソコンの頭脳に相当する重要なパーツです。中央演算処理装置とも呼ばれるように、各パーツの動作だけでなく周辺機器やソフトウエアなどの制御を行うパソコンの中枢としての役割を担っています。高性能なCPUはデータ処理のスピードが速く、また大量の処理を同時並行で実行することが可能。逆にCPUの性能が不足していると、せっかく高性能なパーツを搭載しても性能を十分に発揮できないこともあります。
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GPUの役割
GPUとはグラフィック処理に特化したプロセッサーで、Graphics Processing Unitの略称です。パソコンで表示する画像を描写するための演算を行うのが主な役割で、並列処理能力に優れています。そのため、近年はグラフィック処理だけでなく大量のデータ分析や機械学習など、AI分野でも利用される機会が増えてきました。一般的なパソコンにおけるGPUはCPUに内蔵されているケースが多いのですが、より高性能なGPUが必要な場合は拡張ボードであるグラボ(グラフィックボード)に搭載されているケースもあります。
GPUの種類
GPUには、「CPUに内蔵されたもの」「グラボに搭載されたもの」「クラウド上で利用できるもの」の3種類があります。それぞれに違いがあるため、特徴やメリットを理解して自分に最適なタイプを選びましょう。
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CPU内蔵型
CPU内蔵型とは、CPUにGPUが内蔵されているタイプのことです。Intel製のCPUはGPUを内蔵している製品が多く、別途グラボを購入する必要がないので、あまりコストがかからないというメリットがあります。Webサイトの閲覧やメールの開封などの操作でもGPUが必要ですが、簡単なグラフィック処理であれば内蔵型のGPUでも事足ります。内蔵型は発熱量や消費電力が低いため、高度な映像処理をしないのであればコスパに優れたタイプです。
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グラフィックボード搭載型
グラフィックボード搭載型とは、GPUをグラフィックボード(グラボ)とよばれる拡張ボードに搭載したタイプのことです。内蔵型のGPUでは処理しきれないような高度な映像処理をすることができます。具体的には、3Dゲームをプレイする時や高画質の映像を編集する時、内蔵型のGPUでは映像を処理しきれず、動作がカクついてしまうことがあります。しかし、グラボを搭載することでグラフィックに関する処理能力が各段に向上し、滑らかな映像処理が可能となります。
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GPUクラウド
GPUクラウドとは、クラウド上に設置されたGPUを搭載したサーバーを、インターネット経由で利用できるサービスのことです。内蔵型やグラボ搭載型はローカルのパソコン上で処理を行うため、GPUの性能を発揮するためにはパソコンのスペックも必要となります。一方、GPUクラウドの場合はクラウド上のサーバーで演算処理を行うため、使用するパソコンのスペックが低くても問題ないというメリットがあります。また、最新またはそれに準ずる性能のGPUが提供されるケースが多く、常に高性能なGPUを使い続けることができるのもGPUクラウドの魅力です。
GPUやグラボの製造メーカー
GPUやグラボは複数のメーカーが販売しています。GPUの代表的なメーカーや、GPUとグラボメーカーの関係について知っておくとグラボを選ぶ際に役立つかもしれません。
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NVIDIAとAMD
GPUの主な製造メーカーはNVIDIAとAMD、Intelなどがあります。NVIDIAとAMDは自社製のGPUを搭載したグラボを販売しており、IntelのGPUは内蔵型としてCore iシリーズなどに搭載されています。NVIDIAのGeForceシリーズは複雑な3D映像の描画が得意なため、ゲームなどで美しく滑らかな映像を描画するのが得意。一方、AMDのRadeonシリーズは単純で膨大なデータ処理が得意なため、AI学習や動画編集後のエンコード時間を短縮させることなどが得意です。
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リファレンスとオリジナルモデル
グラボにはリファレンスモデルとオリジナルモデルの2種類があります。リファレンスモデルとはGPUのメーカーであるNVIDIAやAMDが自社のGPUを使って制作したモデルで、いち早く市場に流通するため最新のGPUを搭載したグラボをすぐに使えるというメリットがあります。
一方、オリジナルモデルとは他社のGPUを使ってグラボメーカーが独自のデザインや機能を加えたモデルのこと。クロック数が高かったり、ファンの数や大きさの違いで冷却性能が高かったりと、リファレンスモデルよりも高性能であることが一般的です。グラボは種類が多く迷ってしまうかもしれませんが、基本的には搭載されているGPUで選べば問題ありません。
グラボがあった方が良いケース
ちょっとしたグラフィックの処理程度であれば内蔵型のGPUで事足りますが、高画質な映像をスムーズに処理するためにはグラボが必要になることがあります。では実際にどのような場合にグラボが必要となるのかについて、具体例を挙げながら紹介していきます。
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最新の3Dゲームを楽しみたい
ゲームのグラフィックは年々進化してきており、まるで映画のような映像でゲームをプレイすることができるようになりました。美麗なグラフィックで表現されるゲームの世界を、自分の操作するキャラクターがリアルタイムに動くことによって深い没入感を味わうことができるでしょう。このような3DゲームやVRゲームを遅延なく滑らかに描画するためには、内蔵型のGPUではとても性能が足りません。ゲームのジャンルやタイトルの種類によってグラボに求められるスペックはまちまちですが、高性能なグラボを搭載すれば、より高い解像度でゲームを楽しむことができます。
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高画質な動画を編集したい
高画質な動画を編集するのであれば、グラボがあった方が便利です。グラボがなくても動画編集をすることは可能ですが、編集した動画を書きだすエンコード作業ではグラボの有無によって処理時間が大きく異なります。特に長時間の動画を編集する場合や、1日に何本も動画を編集する場合はエンコード時間の短縮が作業効率の向上につながるでしょう。また、動画編集ソフトによってはグラボの必要スペックが定められており、一定以上の性能を持つグラボを搭載していなければ使用できない場合もあります。
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ディープラーニングやAI開発をしたい
ディープラーニングとはAIを使った技術の一つで、膨大なデータをAIに読み込ませ、規則性や特徴を学習させること。その後、テキストや映像などさまざまな形式で出力したデータを活用します。GPUはグラフィック処理に使われることが一般的ですが、並列での演算処理能力に優れているためディープラーニングでも有益です。グラボを使うことによってディープラーニングの時間が短縮されるため、効率的な学習を実現可能。AIを使った技術はITや工業、教育、医療など、ジャンルを問わず幅広い分野で今後ますます発展していくことが予想されます。GPUはこれからの社会でより重要な役割を担っていくことになるでしょう。
CPUとグラボの性能はどちらを優先すべき?
CPUとグラボ、どちらもパソコンにとって重要なパーツですが、どのような用途であるかによって優先順位は変わってきます。もしパソコンを何に使うか用途が明確であるなら、予算をどちらにより多く割くべきかケースごとに紹介します。
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ブラウジングや事務作業なら
ハイスペックは不要ネットサーフィンやちょっとしたビジネス用途であればハイスペックは不要です。GPUに関してはグラボを搭載する必要はなく、CPUに内蔵されているタイプで十分。CPUについてもエントリークラスのCore i3やRyzen3程度で問題ないでしょう。ただし、仕事で扱うデータのサイズによってはスペック不足に感じることがあるかもしれません。仮にCore i5やRyzen5を選んだとしても、予算10万円以内で十分快適に動作するパソコンを手に入れることができるでしょう。
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ゲーム用途ならグラボ
ゲームがメインの用途ならグラボは必須。特に最新のゲームをプレイしたいのであれば高性能なグラボが必要です。ただし、ゲームの場合はグラボだけでなくCPUも重要な役割を担っています。グラボを搭載することによってグラフィックの描画性能は向上しますが、ゲームの複雑な演算を行うのはCPUの役割です。グラボを優先しつつも、CPUに関しても極端に性能の低いものは避け、最低でもCore i5以上かRyzen5以上を選びましょう。
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動画編集などのクリエイト作業ならCPU
動画編集などのクリエイト作業においては、CPUとメモリーが重要です。ただし、エフェクトを大量に使用したり、多くの動画を編集したりするのであればグラボがあった方が作業効率は良くなります。グラボはミドルレンジクラスに留め、Core i7かRyzen7以上の高クロックかつコア数の多いCPUや、容量の大きなメモリーを選ぶことを優先しましょう。また、動画の素材や編集したデータを保存するためにストレージも大容量のSSDが必要です。
パーツの相性によってはボトルネックが生じることも
パーツの相性や、パーツ同士の性能のバランスが悪いとボトルネックが生じる場合があります。ボトルネックとはパーツ間の性能差があり過ぎる時、一方のパーツがもう一方のパーツの足を引っ張る形で本来の性能を発揮できなくなってしまうことをいいます。ボトルネックが生じたからといって必ずしも問題となるわけではありませんが、せっかく高性能なパーツを購入するのであれば性能を無駄にしたくはありませんよね。どのような時にボトルネックが生じるのか、CPUとGPUを例として具体的に見ていきましょう。
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CPUがボトルネックとなるケース
CPUがボトルネックになるということは、CPUの性能が低くGPUが十分に性能を発揮できていない状態であるといえます。ゲームにおいては高フレームレートの場合にCPUがボトルネックとなるケースが多いでしょう。GPUが描写できるフレーム数が多い状態が高フレームレートです。フルHDなど解像度が低いとGPUが描写できるフレーム数は増えますが、CPUは生成されたフレームを処理しきれないためボトルネックが発生します。
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GPUがボトルネックとなるケース
先ほどとは逆のパターンで、4Kなど高解像度やレイトレーシングでゲームをプレイする場合はGPUがボトルネックとなりやすいです。GPUにかかる負荷が大きく生成できるフレーム数が少ないと、CPUにかかる負担は小さくなります。言い換えると、CPUの性能が高く多くのフレームを処理できる余裕があるのに、GPUの性能が低いためフレームレートが下がっている状態は、GPUがボトルネックになっているともいえるでしょう。GPUへの負荷が大きくなるケースとしては高画質でゲームをプレイする以外にも、大量のデータを並列に処理するAIアプリの実行時などもあげられます。
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ボトルネックは気にし過ぎなくて良い
ボトルネックが発生したとしても、必ずしもパフォーマンスが低下するとは限りません。ゲームによってはフレームレートに上限があり、既に上限に達している場合はボトルネックを解消したとしても見た目上は何も変化がありません。また、体感できない程度の差であれば仮にボトルネックが生じていたとしても問題ないでしょう。どのようなパーツを選んだとしても、多少はボトルネックが生じる可能性はあります。ボトルネックを気にし過ぎて高価なパーツを選ぶよりは、どこかで折り合いを付けて許容することも大切です。
CPUやグラボ以外のパーツも大切
パソコンを快適に使うためにはCPUやグラボ以外にも重要なパーツがいくつもあります。用途によってはCPUやグラボよりも重要となる場合もあるため、自分がパソコンを使ってどのような作業をしたいのかについてまずは考えてみましょう。ここではパソコンのスペックを選ぶ時に考慮すべき代表的なパーツについていくつか紹介します。
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メモリー
メモリーはデータを一時保存しておくためのパーツです。CPUが毎回ストレージから情報を読み込んでいては処理に時間がかかってしまうため、アクセス頻度の高い情報をメモリーに一時保存することによって、パソコンの処理速度を向上させているのです。メモリー容量が大きいと同時に処理できる情報量が増えるため、パソコンの動作が快適になります。エントリークラスのパソコンの中には4GBのモデルもありますが、趣味用途でも8GBは欲しいところ。ゲームや動画編集なら16~32GBはあった方が良いでしょう。
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ストレージ
ストレージはデータを保存しておくためのパーツ。大きく分けてSSDとHDDの2種類があり、現在は読み込み・書き込み速度の速いSSDが主流となっています。HDDと比べてSSDは衝撃にも強いため、最近のノートパソコンに搭載されているストレージはほぼ全てSSDです。たくさんのアプリをインストールしたり、サイズの大きいファイルを大量に保存するためには容量の大きなストレージが必要です。また、SSDにはSATA3.0よりもNVMeという規格があり、NVMeの方がデータの読み込み速度が速いといった特徴があります。
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電源ユニット
基本的に高性能なパーツは消費電力が大きいという特徴があります。パソコンのパーツの中でもグラボは特に消費電力が大きく、電力の供給が足りなければ本来の性能を発揮できなかったり、パソコンの電源が落ちたりする可能性があります。電源ユニットはコンセントから流れてくる電力を、パソコンが使える状態に変換して供給する役割を担っています。電源ユニットの容量は消費電力ギリギリの最低限ではなく、パソコン全体の消費電力の約2倍が適正だとされています。
パソコンを選ぶ時にまず決めること
パソコンを選ぶ時はスペックや価格を比較することも大切ですが、まず最初に考えるべきことがあります。これからパソコンを購入しようと考えている人は参考にしてみて下さい。
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用途を決める
パソコンを選ぶ時はまず用途について考えてみましょう。パソコンを使って何をしたいのか、いつどこで使うことが多くなるのかといったことが明確になれば、必然的にどの程度のスペックが必要なのかが見えてきます。デスクトップとノートどちらにすべきか、CPUとグラボどちらを優先すべきかといった悩みも、パソコンの用途が決まれば解決することができるでしょう。
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予算を決める
さまざまなメーカーが豊富なラインアップのパソコンを販売しているため、ユーザーは自分のニーズに合った1台を選ぶことができます。しかし一方で、シリーズやスペックなど種類が多過ぎてどれにしようか迷ってしまう人も多いでしょう。パソコンの価格はメーカーやスペックによって異なるため、予算を決めることである程度候補を絞り込むことが可能です。価格の高いパソコンが必ずしも高性能というわけではありませんが、パソコンの価格と性能は概ね比例します。まずは予算を決めることで、パソコン選びが少し楽になるでしょう。
おすすめのパソコン3選
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Lenovo Legion Tower 5i Gen 8:
カスタマイズモデル -
Lenovo Legion 7i Gen 9:
カスタマイズモデル -
IdeaPad Slim 3i Gen 9(14型):
カスタマイズモデル
まとめ
CPUとグラボはそれぞれ役割が異なるため、どちらを優先すべきかはパソコンの用途が何であるかによって決まります。一方の性能を優先し過ぎて、もう一方の性能を極端に下げてしまうと、ボトルネックが発生して十分に性能を発揮できない可能性もあるかもしれません。また、用途によってはCPUとグラボ以外にも重要なパーツがあります。パソコンを選ぶ際はそれぞれのパーツの役割について正しく理解し、全体の性能バランスも考慮して選びましょう。