目 次
OLEDの基本情報
ディスプレイや照明技術の一つであるOLED。比較的新しい技術であるため、まだあまりなじみのないという人もいるかもしれません。まずはOLEDがどのようなものであるか概要を理解するためにも、OLEDの基本構造から仕組みや特徴、種類などについて見ていきましょう。
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OLED(有機EL)とは何か
OLED(有機発光ダイオード)とは「Organic Light Emitting Diode」の略称で、自発光する有機材料を使用したディスプレイ技術です。日本では「有機EL」と表現されることが多く、微妙なニュアンスの違いはあるものの、OLEDと有機ELはどちらも同じ技術を指していると考えて問題ないでしょう。OLEDは薄くて軽量、さらには色の再現性が高いため、テレビやスマートフォン、ウエアラブルデバイスなど、幅広いデバイスに利用されています。
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OLEDの基本構造
OLEDは、複数の薄い有機層で構成される発光デバイスです。基板(ガラスやプラスチックなど)の上に、透明なアノード層が配置され、その上に発光層や電荷輸送層などの有機材料層が続き、さらにカソード層がこれを覆っています。発光層には、色を決定する役割があり、赤、緑、青の有機材料で構成されることが多く、電流が流れると、有機材料層で電子とホールが再結合し、光が放出されます。
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OLEDの発光の仕組み
OLEDの発光は、有機材料内で電子(負電荷)とホール(正電荷)が再結合することで光を放つ仕組みです。電圧を加えると、陽極からホール(正孔)が、陰極から電子がそれぞれ有機層に注入され、電子とホールは発光層で再結合します。この時、原子や分子のエネルギーが高まり励起状態へと変化し、励起状態から基底状態に戻る際にエネルギーが放出されるのを利用して発光する仕組みです。有機材料の特性により放出される光の色を制御することができるため、バックライトを使用せずに美しい発光が可能となっています。
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OLEDの特徴
OLEDの特徴は、自己発光型であることにより、高コントラスト比と鮮やかな色彩を実現できる点です。バックライトが不要なため、構造がシンプルで薄型・軽量化が可能。また、視野角が広く、どの角度から見ても色や明るさの変化が少ないという特徴を持ちます。さらに、柔軟な基板を使用することでフレキシブルディスプレイや折りたたみ型デバイスにも応用することができます。ただし、有機材料の劣化により液晶と比べると寿命が短いことや、製造コストが高い点などが課題とされています。
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OLEDの種類
OLEDディスプレイには、OLEDパネルを制御する方法に基づき「PMOLED」と「AMOLED」という2つの種類があります。どちらもOLEDの技術を使っている点では共通していますが、性能や用途に大きな違いがあるため、両者の違いを知っておくことで適切なディスプレイを選ぶことができるでしょう。それぞれの特徴について解説します。
● PMOLED(Passive Matrix OLED)
PMOLED(パッシブマトリクス有機発光ダイオード)は、小型ディスプレイ向けに設計され、シンプルな構造と制御方法が特徴です。画素を行列状に配置し、電流を行と列で選択的に流すことで点灯させる仕組みを採用しています。そのため、ドライバ回路が簡易で製造コストを抑えられるのがメリット。一方で、点灯時間が短くなるため、明るさや効率が制限され、消費電力が増加しやすいといった課題があります。低解像度の小型ディスプレイや単色表示、文字や簡単なアイコンの表示に適しており、腕時計や家電機器などに広く利用されています。
● AMOLED(Active Matrix OLED)
AMOLED(アクティブマトリクス有機発光ダイオード)は、スマートフォンやテレビなど、大型や高解像度のディスプレイに適したOLED技術です。各画素に薄膜トランジスタと蓄電コンデンサを組み込み、個別に制御する仕組みを持っています。画素を常時点灯できるため、高い明るさと省電力を実現。また、応答速度が速く、動画やゲームなど動きの速い映像でも滑らかな表示が可能です。高解像度や広色域、広視野角もAMOLEDの特徴で、スマートフォンやテレビなどのハイエンドデバイスに多く採用されています。
OLEDとLCD(液晶ディスプレイ)の違い
ディスプレイ技術にはさまざまな種類がありますが、特にOLEDとLCD(液晶ディスプレイ)は広く利用されています。両者は発光原理や構造が異なるため、画質や消費電力、設計の自由度などに大きな違いが見られます。どのような違いがあるか1つずつ見ていきましょう。
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基本構造と動作原理の違い
OLEDとLCDでは基本構造や動作原理が異なります。OLEDは、各ピクセルが自発光する有機材料を使用し、電流が流れると光を発します。そのため、バックライトが不要で薄型化が可能。また、高いコントラスト比と広い視野角が特徴です。一方、LCDは液晶分子を用いており、バックライトの光を液晶が偏光板を通して調整します。液晶自体は光を発しないため、バックライトが必要です。厚みが出やすく、OLEDと比べると視野角が狭くなる傾向があります。
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画質の違い
OLEDとLCDでは画質にも違いがあります。OLEDは各ピクセルが独立して発光するため、完全な黒を表現することが可能。これにより、コントラスト比が非常に高く、暗いシーンでも細部が鮮明に映し出されます。また、広い視野角を持ち、斜めから見ても色の変化や輝度の低下が少ないのが特徴です。一方、LCDはバックライトの影響で黒が完全に黒として表示されないことが多く、コントラストが低くなります。
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消費電力の違い
OLEDとLCDでは発光方法が異なるため、消費電力にも違いが生じます。OLEDは各ピクセルが自発光し、ピクセルごとに発光を制御するため、表示する内容によって消費電力が変動します。一方、LCDはバックライトが常時点灯しているため、表示内容にかかわらず一定の消費電力を消費します。LCDはOLEDと比べると消費電力が一定しやすいですが、暗いシーンの多い映像を映し出す場合はOLEDの方が効率的です。
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焼き付きの有無
OLEDとLCDでは、焼き付きの発生リスクに大きな違いがあります。OLEDの有機材料は時間と共に劣化し、特に青色の発光材料が他の色に比べて寿命が短いという特徴があります。長時間同じ画像を表示し続けると、特定のピクセルが劣化し、残像が残る「焼き付き」が発生する可能性があるため注意しましょう。一方、LCDはバックライトを使用するため、焼き付きの問題は基本的に発生しません。静止画を長時間表示する場合はLCDの方が安心です。
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価格や製造コストの違い
OLEDとLCDでは価格や製造コストにも違いがあります。OLEDは個々のピクセルを独立して制御するため、構造が複雑で製造コストが高くなります。一般的にLCDよりも価格が高い場合が多く、特に大型ディスプレイでは価格差が顕著です。一方、LCDは液晶パネルをバックライトで照らす仕組みで、製造プロセスが比較的単純であり、大規模生産が可能。バックライトにLEDを使用することで、コストを抑えて製造することができるため、価格が比較的安く広く普及しています。
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フレキシブルディスプレイへの
採用可否OLEDとLCDでは構造や素材が異なるため、製品の特性にも違いがあります。OLEDは自発光型でバックライトを必要としないため、薄く柔軟な構造が可能です。フレキシブルディスプレイにも応用することができ、曲がるスマートフォンや巻き取り式ディスプレイなど、さまざまな形状を実現しています。一方、LCDはバックライトや液晶層、ガラス基板が必要であり、これらが硬い素材であるため、柔軟性に限界があります。厚みが出やすく、フレキシブルな応用には適していません。
OLEDを選ぶ時の注意点
OLEDは画質の高さや薄型設計も可能な自由度が魅力ですが、OLEDディスプレイを選ぶ際にはいくつかの注意点があります。特に、寿命やコスト、焼き付きのリスクなど、用途に応じた適切な選択が重要です。
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焼き付きの可能性がある
OLEDディスプレイは、同じ画面を表示し続けると焼き付きが発生することがあります。画像が焼き付いてしまうと、画面が変わっても残像のようにうっすらと見えることがあるため要注意です。デバイスによっては、画面の一部を少しずつ移動させて焼き付きのリスクを減らす機能が搭載されていたり、焼き付き防止用のソフトウエア機能が提供されていたりする場合もあります。OLEDディスプレイで焼き付きを避けるためには、画面を定期的にオフにするなどの対策も有効です。
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発色が悪くなる可能性がある
OLEDディスプレイを長期間にわたって使用していると、経年劣化により発色が悪くなる可能性があります。特に青色のピクセルが他の色と比べて劣化しやすく、色のバランスが崩れることがあるかもしれません。これはOLEDが有機材料を使用しており、有機材料は経年劣化で発色が低下するため、どうしても避けることができない現象です。OLEDディスプレイを長持ちさせるためのコツは、「長期間の高輝度表示を避ける」「青色の映像を連続表示することを避ける」といった対策が有効でしょう。
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価格が高い
OLEDディスプレイは高品質である反面、LCDと比べると製造コストが高く、価格も高くなりがちです。OLED搭載のスマートフォン、テレビ、モニターなどは一般的に高価格帯の商品になる傾向があるため、導入する際は予算を考慮する必要があります。購入前には価格と性能のバランスを考え、用途や必要な機能を精査した上でコストに見合った価値があるかどうかをよく検討する必要があります。
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高輝度では消費電力が高くなる
OLEDディスプレイは高品質である反面、LCDと比べると製造コストが高く、価格も高くなりがちです。OLED搭載のスマートフォン、テレビ、モニターなどは一般的に高価格帯の商品になる傾向があるため、導入する際は予算を考慮する必要があります。購入前には価格と性能のバランスを考え、用途や必要な機能を精査した上でコストに見合った価値があるかどうかをよく検討しましょう。
OLEDのメリット
OLEDディスプレイは、先進的な技術により多くのメリットを提供します。コントラスト比の高さや鮮やかな色彩、薄型・軽量な設計が可能といった点で、従来のディスプレイ技術を大きく上回る性能を持っています。具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
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色の再現性が高い
OLEDディスプレイは、色の再現性が非常に高く、映像や画像を鮮明に表示することができます。OLEDでは各画素が独立して発光する構造となっており、RGB(赤・緑・青)の各サブピクセルが直接光を発します。そのため、色の純度が高く、正確な色表現が可能。さらに、バックライトを必要としないため、従来のLCDで問題となる色のにじみや光漏れが発生せず、鮮やかな発色を可能としています。
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コントラスト比が優れている
OLEDは個々の画素が独立して発光し、必要な時だけ点灯する仕組みです。バックライトを使用するLCDのように光漏れが発生せず、黒を表示する際には該当する画素の発光を完全に停止します。その結果、明るい部分と暗い部分の明暗差が大きくなり、極めて高いコントラスト比を実現。OLEDディスプレイなら映像の深みや立体感が増し、特に暗いシーンが多い映像作品で際立った表現力を発揮できるでしょう。
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視野角が広い
視野角が広いのもOLEDのメリットの一つです。OLEDでは各画素が自発光するため、光の方向性が均一になるという特性があります。そのため、どの角度から見ても明るさや色合いがほぼ一定に保たれます。LCDではバックライトを透過する構造上、視野角が広がると明るさや色が歪むことがありますが、OLEDではその影響がほとんどありません。横から見ても正確な色彩やコントラストを維持できるため、複数人での視聴や広いディスプレイにおいても高いパフォーマンスを発揮します。
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柔軟性とデザインの自由度
OLEDは自発光型でバックライトが不要なため、非常に薄く軽量なディスプレイを実現できます。また、有機材料を使用しているため、ガラス基板に限定されず、プラスチック基板にも対応可能。これにより、曲げたり折りたたんだりできるフレキシブルディスプレイや、曲面ディスプレイの設計を実現することもできます。従来の技術では困難だった自由度の高いデザインが可能となったことにより、車載ディスプレイやインテリアとしてのディスプレイなどに広く活用されています。
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消費電力が低い
OLEDは各画素が独立して発光するため、表示する内容に応じてエネルギー消費を調整することができます。表示されていない部分は電源を切り、特に黒を表示する際には該当する画素の発光を完全に停止できるため、バックライトを常に点灯させるLCDに比べて効率的です。また、低輝度でも高い視認性を維持できるため、明るさを抑えた設定でも優れた画質を提供。これにより、電力消費が重要なモバイルデバイスやウエアラブルデバイスではバッテリーの持ちが良くなるといったメリットもあります。
まとめ
OLEDはテレビやスマートフォン、高級モニターなど幅広い用途で採用されているディスプレイ技術です。自発光する有機材料を用いており、バックライトが不要で薄型・軽量、高コントラスト比と鮮やかな発色を実現します。デザインの自由度が高く、高画質、視野角の広さ、省電力がメリットですが、価格はやや高め。コストや焼き付きリスクを考慮しつつ、用途に合わせて適切なディスプレイを選びましょう。